日本に在留するうえで気を付けるべき入管法の罰則を解説!
入管法で定められている特に気を付けるべき罰則
この記事では日本に在留するうえで気を付けるべき罰則について解説します。
どんなことをしたらいけないか?また、どんなことをしたらどのような罰則を受けるか?
このことについて知っておくのは在留するうえでとても大事な点となります。
外国人本人にとっては在留資格を取得して、実際の日常活動を行っているので実感がわかないかもしれません。ですが、在留資格を取得して日本で生活をするのはあくまでも入管法、つまり「出入国在留管理および難民認定法」という法律の枠組みのなかでの活動になります。ですから、その法律の枠組みを理解しておき、その限界点である罰則を理解しておくことは重要なのです。
というのも、自分では気を付けていても、この罰則を知らないために知らず知らずのうちに罪を犯し、場合によっては帰国せざるを得ない状況になる可能性も大いにあるからです。
また、少しでも罰則を受ければ、これからの在留資格の変更や更新の際に悪い影響を与えてしまうことを免れません。
不法残留罪 (入管法70条1項5号)
不法残留とは、入国、上陸の手続きを適法に行っているが、その際許可された在留期限を超えて出国せず、日本に残り在留資格の更新や変更もしないまま在留し続けている状態を指します。
いわゆる「オーバーステイ」の状態ですね。
不法残留の罰則は以下の通りです。
在留期間の更新または変更を受けないで在留期間を経過して日本に在留する者は3年以下の懲役若しくは禁錮もしくは300万円以下の罰金、またはその懲役若しくは禁錮及び罰金が併科されます。
不法在留罪 (入管法70条2項)
不法在留罪は日本に不法に入国したり、不法に上陸したりしたものが引き続き不法に在留する際の罰則となります。
日本に不法入国または不法上陸した者が、上陸後も引き続き不法に在留する場合には、3年以下の懲役若しくは禁錮若しくは300万円以下の罰金、またはその懲役若しくは禁錮および罰金が併科されます。
在留資格等不正取得罪 (入管法70条1項2号の2)
偽りその他不正の手段により上陸許可を受けて上陸したり、在留資格の変更許可を受けたり、在留期間の更新許可を受けた場合、3年以下の懲役若しくは禁錮若しくは300万円以下の罰金、またはその懲役若しくは禁錮及び罰金が併科されます。
これは、
入国管理局に提出する申請書などに客観的事実と整合性の取れない事を記載すること。
または自身に不利となる事実を隠すこと、または虚偽の記載をすることによって許可を得た場合などの罪となります。
仮に、企業側が申請代理人として虚偽の記載に関与した場合は同罪の共犯が成立する可能性があるので、外国人を雇用する側の人は注意しましょう。
営利目的在留資格等不正取得助長罪 (入管法74条の6)
これは「営利目的」という名称がついている通り、不法入国、不法上陸、在留資格等不正取得を営利目的で助長した場合に3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、またはこれらの併科がされます。
たとえば、代表的なのは密航ブローカーなどがこれに該当します。
審査ゲートをすり抜けさせるために協力したり、偽造旅券の提供したりなど不法入国を容易にさせる行為を営利目的で行うなどです。
また在留資格を取得するために、存在しない大学の卒業証書を偽造する行為や、婚姻の実体性のない虚偽の配偶者を紹介し、法的な婚姻関係を結ばせたりする行為などもこれに該当します。
弁護士や申請取次行政書士の方が関わった場合、懲戒請求などがなされる可能性もあります。
資格外活動罪 (入管法70条1項4号・73条)
資格外活動罪は、資格外活動を「もっぱら」行っていると明らかに認められる者について適用されます。
「資格外活動」というのは、許可された在留資格に定められた活動とは異なる活動によって収入または報酬を得ることを意味します。
こちらは、許可された在留資格で定められた活動以外の活動によって収入や報酬を得ており、「もっぱら」こちらの方を本来許可された在留資格の活動と比較して主たる活動として行っていると「明らかに」認められる場合に資格外活動罪が適用されます。
「もっぱら」資格外活動を行ったと認められる場合
3年以下の懲役若しくは禁錮若しくは300万円以下の罰金、またはその懲役若しくは禁錮及び罰金が併科されます。
資格外活動を行った場合
1年以下の懲役若しくは禁錮又は200万円以下の罰金、またはその懲役もしくは禁固および罰金が併科されます。
資格外活動は退去強制事由に該当することもあります
- 資格外活動を「もっぱら」行っていたと「明らかに」認められる者
- 入管法73条の罪で禁錮以上の刑に処せられた者
これらの者は退去強制事由に該当します。
不法就労助長罪 (入管法73条の2第1項)
不法就労とはオーバーステイ状態の者や不法入国者が報酬を得て仕事をすること。資格外活動許可を得ないで報酬を得て就労すること。在留資格に対応していない仕事内容の仕事に従事することなどを意味します。
第七十三条の二 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 事業活動に関し、外国人に不法就労させた者
二 外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者
三 業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあっせんした者
事業活動に関し、外国人に「不法就労させた者」とはどんな人が該当する?
「不法就労させた者」とは「外国人との間で対人関係上優位に立っている者が、当該外国人がその指示通りに不法就労活動を行うことを利用して当該外国人に積極的に働きかけ、その結果として当該外国人が不法就労活動を行ったこと」を意味します。
また、判例では「当該外国人との間で対人関係上優位な立場にあることを利用して、その外国人に対し不法就労を行うべく指示などの働きかけをする」ことで、不法就労させたと認められるとされています。
外国人に不法就労活動をさせるためにこれを「自己の支配下に置いた」とはどんな場合が該当する?
これについては「外国人のその意思を左右できる指示・従属の関係に置くことを意味し、物理的拘束のみでなく、心理的な拘束も含むものと解される」とされています。
判例では「外国人に心理的ないし経済的な影響を及ぼし、その意思を左右しうる状態に置き、自己の影響下から離脱することを困難にさせた場合も含まれる」とされています。これは不法就労の就労先が決まるまでパスポートを取り上げるなどの行為などが代表的なものとなります。
不法就労助長罪は退去強制事由に該当します
- 不法就労をさせる
- 不法就労をそそのかすこと
- 不法就労を助けた者
これらの者は退去強制事由に該当します。
在留カード関係の罰則
ここからは在留カードに関する罰則を解説します。
外国人にとって日常的に問題となるのはこっちの方が多いかもしれませんね。
在留カードの携帯義務違反 (入管法75条の3)
中長期在留者が在留カードを常時携帯義務があります。つまり、この常時携帯義務に反する、カードを身に携帯していない場合、20万円以下の罰金に処せられます。
在留カードの掲示義務違反 (入管法75条の2第2号)
入管法第二十三条 3項
前二項の外国人は、入国審査官、入国警備官、警察官、海上保安官、その他法務省令で定める国または地方公共団体の職員が、その職務の執行にあたり、これらの規定に規定する旅券、乗員手帳、特定登録者カード、許可書又は在留カードの提示を求めたときは、これを提示しなければならない。
中長期在留者は入国審査官や入国警備官、警察官などが在留カードの提示を求めた場合には提示する義務が入管法23条3項で定められています。この在留カードの提示を求めた場合に拒めば1年以下の懲役または20万円以下の罰金に処せられます。