日本に永住するための要件 ③ 国益適合要件 その2~身元保証人について~
日本へ永住するための3つの要件 ~前回のおさらい~
まず永住者の在留資格を取るための3つの要件をおさらいしましょう。
「永住者」3つの要件(審査項目)
- 素行善良要件
- 独立生計要件
- 国益適合要件
前回の記事「日本に永住するための要件 ③ 国益適合要件 その1」では、③の国益適合要件について見てきました。
特に以下のア~イ、2つの要件について具体的に見ましたね。
③ その者の永住が日本国の利益に合すると認められること
ア 原則として引き続き10年以上本邦に在留していること。ただし,この期間のうち,就労資格(在留資格「技能実習」及び「特定技能1号」を除く。)又は居住資格をもって引き続き5年以上在留していることを要する。
イ 罰金刑や懲役刑などを受けていないこと。公的義務(納税,公的年金及び公的医療保険の保険料の納付並びに出入国管理及び難民認定法に定める届出等の義務)を適正に履行していること。
ウ 現に有している在留資格について,出入国管理及び難民認定法施行規則別表第2に規定されている最長の在留期間をもって在留していること。
エ 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと。
出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(令和元年5月3日改定)」より
今回は③国益適合要件の続き「国益適合要件 その2」として、残りのウ~エの要件についてと、重要な要件である身元保証人についても解説していきます。
③国益適合要件 その2
ウ 現に有している在留資格について、出入国管理及び難民認定法施行規則別表第2に規定されている最長の在留期間をもって在留していること。
ウでは今現在の在留資格/ビザの有効期限が最長の在留期間許可年数であることが求められています。
たとえば「技術・人文知識・国際業務」の在留資格/ビザならば5年の在留期間で許可を受けているというようなことです。
ですが、現在(2022年 6月の時点)では3年以上の許可を受けていれば、最長の在留期間をもって在留しているとみなさるとされています。
そのため、3年より長い在留許可を受けていれば問題ありません。
エ 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと。
エは文字通り、公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないことが求められています。
これは具体的な病名を挙げれば以下のものなどです。
公衆衛生上の観点から有害となるおそれのあるもの
〇麻薬・覚せい剤・大麻等の慢性薬物中毒者
〇クリミア・コンゴ出血熱 痘そう 南米出血熱 ラッサ熱のウイルス性出血熱 ペスト マールブルグ病等の一類感染症
〇ポリオ 結核 ジフテリア SARS MERS 鳥インフルエンザ等の二類感染症、指定感染症、新感染症等の罹患者
これらの薬物中毒や、病気、感染症に該当する場合、公衆衛生上有害となるおそれがあるものとして取り扱われてしまいます。つまり、許可が下りません。
公衆衛生上で有害にならないという証明書としては、健康診断書などを添付するとよいでしょう。
身元保証人も必要
以上でア~エについての要件をすべて見てきました。
上記の出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン」上には記載されていませんが、
これらの要件に加えて、必要な要件があります。
それは、「身元保証人」です。
永住を考えている方は、身近な知人や友人に身元保証人になってもらうことが必要なのです。
身元保証サービスをおこなう会社もあります。それらを利用するのもひとつの手段でしょう。
ですが、できるだけ実際の知り合いに身元保証人になってもらいましょう。
多くのケースを見ていますと、働いている会社の上司や信頼のおけるともだち、学生時代の先生などにお願いすることが多いようです。
しかし実際に永住申請の身元保証人になれる人は限られています。
身元保証人になれる方は、日本人か、外国人の「永住者」になります。
これらを考慮すると、職場の上司や友人で、日本人の方あるいは「永住者」として在留する外国の方に身元保証人のお願いするのがベストな選択だといえますね。
身元保証人の保証するものは3つある
身元保証人になれる人はわかったけど、けっきょく何を保証するの?と質問が聞こえてきそうです。
身元保証人が保証するのは次の3点になります。
永住申請者に対して身元保証人が保証するもの
- 滞在費
- 帰国費用
- 法令遵守
身元保証人が保証するものは①滞在費 ②帰国費用 ③法令の遵守。この3点について簡単に見ていきましょう。
①滞在費
滞在費は永住申請する方が日本に滞在するため必要な費用全般となります。
②帰国費用
万一、永住申請者が帰国しなければならなくなった際の空港までの交通費、航空チケット代などです。
③法令遵守
永住申請者が日本で生活するうえで守らなけらばならない法令等を遵守するよう指導する必要があります。
後で触れますが、保証といっても、永住申請をする方が①~③についての条件を守るようにサポートするといった意味合いです。
たとえば滞在費や帰国費用など、本人だけではやりくりできない場合、こちらを代わりに出してあげるなどのことを求められています。
では、身元保証人はこれらについてどこまで責任をもつべきなのでしょうか?
身元保証人の責任
永住しようとする方に身元保証人をお願いされた場合に、戸惑ってしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか?
またこれは、これから永住を考えており身元保証人をさがしている方には、ぜひとも見ておいていただきたい内容です。
身元保証人の責任についてですが、まず結論から言ってしまうと、「法的な責任」はありません。
永住申請における身元保証人は契約における連帯保証人などとはちがいます。
そのため、法的な責任は負わなくてよいのです。
かわりに、道義的責任を問われます。
「法的責任」と「道義的責任」のちがい
法的責任がないとは?
法的責任がないということですが、これは身元保証人を引き受けた永住申請者が、仮に社会的な信頼を失う行為をしても、それに対して法的に責任などを問われることはない、という意味になります。ですから、かわりに滞在費や帰国費用を請求されたり、法令を守るように指導しない、ということを法律を根拠として責任追及されたり、罰されたりすることはありません。
道義的責任とは?
道義的責任に関してですが、先ほども述べたように、身元保証人を引き受けた永住申請者が、社会的な信頼を失う行為をしないように指導やサポートするというような意味です。そのため、法的な責任を負わず、道義的な責任のみを負うということになります。
身元保証人を引き受けるデメリット
法的責任と道義的責任のちがいについてお判りいただけましたでしょうか?
よくある質問として、ここで身元保証人を引き受けるデメリットについてお話ししたいと思います。
身元保証人を引き受けることによるデメリットとしては、万が一、永住申請する方が法律に反する事態を起こしてしまった場合に、次回から永住申請する方の身元保証人を引き受けられなくなるなどの可能性があるということになります。
デメリットといってもこれくらいなんです。
見てきたように、道義的責任のみしか負わないので、永住申請する方の身元保証人を引き受けるということに、格別の心配まではいらないのです。
どうして身元保証人をつけるの?
このように道義的責任しか負わない身元保証人ですが、なぜ必要なのでしょうか?
これは永住申請をする方が、どれくらい日本という外国の土地で溶け込み、人間関係を構築できているかを見ているといえます。言い換えれば、身元保証人を引き受けてくれるような親しい間柄が日本にあるかどうかを審査しているともいえるのです。
こういった側面があるので、身元保証会社などを利用するのはオススメしません。
できるだけ実際の知り合いや、親しい友人などに身元保証人を引き受けてもらうようにしましょう。
身元保証人の年収条件はない
つい最近まで、「永住者になろうとしている人の身元保証人は安定した収入があり、納税をしっかりしている人物でなければならない」という身元保証人になるための条件がありました。
ですが、この要件は現在(2022年 6月)ではなくなり、身元保証人の年収に関しては問わないという運用になっています。
無職の方でも身元保証人になれるの?
無職の方でも身元保証人になることができます。
ただし、身元保証人を引き受けるその人が日本人か、「永住者」の方である必要があります。
身元保証人の提出書類
身元保証人になるための提出書類は以下の2点のみとなります。
- 身元保証書
- 身元保証人の身分証のコピー
身元保証人を引き受けてもらうために
永住をお考えの方は、身元保証人を引き受けてもらう方に、しっかりこのことを説明しましょう。あるいはこの記事を見せて教えてあげましょう。そうすることで、身元保証人を引き受けてもらえる可能性が高くなるはずです。
身元保証人の書類はこちら⇩からダウンロードできます
出入国在留管理庁 身元保証人の記入書類はこちらにリンクを貼っておきますのでご利用ください。
まとめ
この記事では「永住するための要件③国益適合要件 その2」として、国益適合要件ア~エのウとエについて解説してきました。
特に、
いまもっている在留資格の最長の在留期間の許可を得ていること。
現在では3年以上の在留許可を得ていれば大丈夫でしたね。
公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと。
これは枠で囲った病気などでないことを証明する必要がありましたね。
永住申請の際の身元保証人について。
身元保証人には日本人か永住者しかなれなく、法的責任は負わずに道義的責任のみ負う。
などについて解説しましたね。
基本的な永住申請の要件は今までの「日本に永住するための要件①~③」の記事で紹介したことになります。
以下にリンクを貼っておきますので、分からないことがあれば、これらの記事に戻ってみてください。
永住申請の要件についての基本を解説した記事
次回の記事では、在留資格別の永住申請の要件について解説していきます。
ご自身の在留資格から見て、永住する際に守るべきポイントを個別に解説しますので是非ご覧くださいね。