日本に永住するための要件 ①素行善良要件
前回のおさらい ~日本へ永住するための3つの要件~
日本で永住権を獲得するためには、「永住者」という在留資格/ビザを取得する必要があることを前回記事でみてきました。
そしてそのためには3つの要件、つまり ”審査項目”がありましたね。
「永住者」3つの要件(審査項目)
- 素行善良要件
- 独立生計要件
- 国益適合要件
この3つが「永住者」になるときに審査される項目となります。
この3つを見て、
わたしは素行も悪くないし、生計もひとりで維持できてる。それにきっと日本の国益にもなっている。だから永住できるはず。
そう思った人もいるかもしれません。
もちろん、そう簡単に永住できるわけではありません。
この、大きく分けた3つの審査項目のなかにも、それぞれいくつかの満たさなければならない要件、つまり審査項目があります。
では、本題にはいりましょう。
今回はその一つ目である素行善良要件について詳しく見ていきたいと思います。
①素行善良要件
永住者を取得するための「素行」とは?
「素行」という言葉をご存じですか?
もちろん日本人の方は知っているでしょう。ですが、外国人の方ならばあまり聞きなれない言葉だと思います。
一般に「素行」というと、その人のふるまいや、日常生活においての礼儀や身の振り方を指す言葉として使われますね。たとえば、日常的に乱暴な話し方や、問題を起こしがちな人を指し「素行が悪い」などといいます。
では、出入国在留管理庁の①素行善良要件はどのように定義されているでしょうか。見てみましょう。
① 素行が善良であること
法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいること。
出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(令和元年5月3日改定)」より
だいたい一般的な「素行」の意味と同じような内容ですね。
「永住者」の在留資格を取得するための要件としての「素行」は大きく分けて次の①と②になります。
素行善良要件の「素行」とは?
- 日本国の法令に違反し、懲役・禁錮または罰金に処せられたことがないこと
- 日常生活や社会生活において違法な行為や風紀を乱す行為をくりかえし行っていないこと
まず①から見ていきます。
①日本国の法令に違反し、懲役・禁錮または罰金に処せられたことがないこと
こちらはひと言でいえば、悪いことをして処罰されていないことを求められています。
身に覚えがなければおそらく大丈夫でしょう。では、もし処罰されたことがあれば素行善良要件を満たさないことになり、永住許可が下りないことになるのでしょうか?
処罰されたことがある場合
処罰されたことのある人でもある一定期間が過ぎれば、要件を満たしているとされる可能性があります。
たとえば次のような場合です。
懲役・禁錮 →刑務所から出所後10年過ぎていること
執行猶予付き →猶予期間満了から5年過ぎていること
懲役・禁錮の場合は刑務所から出てから10年が経過していること。執行猶予なら猶予期間満了から5年経過していることが必要です。
罰金・拘留・科料 →支払いを終わって5年過ぎていること
罰金・拘留・科料の場合は支払いを終えてから5年が経過すること。それによって日本国の法令に違反して処罰されたものとしては取り扱われなくなります。
以上で①は終わりになります。
続いて②を詳しく見ていきましょう。
②日常生活や社会生活において違法な行為や風紀を乱す行為をくりかえし行っていないこと
②は①”日本国の法令に違反し、懲役・禁錮または罰金に処せられたことがないこと”に該当しない軽い法令違反であって、くりかえし違反していない者であることが求められています。
つまり、軽い違反だったとしても、くりかえし何度も注意や警告をされている履歴があるようだとダメということになります。
いちばん多いのは車や自転車の違反
②で一番多いのは車や自転車の違反です。
駐車禁止違反、一時停止違反、携帯電話の使用。あるいは自転車での信号無視や歩行者妨害などが当たります。基本的には過去5年間で5回までくらいならだいじょうぶと考えてよいでしょう。もちろん、少なければ少ないほど良いです。ですが「故意な違反」とみられるような場合、たとえば飲酒運転、無免許運転は軽微な違反ではないので1回でもしてしまうとダメです。
車や自転車の違反を確認するためには「運転記録証明書」を取得する
自分がどのような違反をしたことがあるかわからない場合、どうすればよいでしょうか?
こちらは「運転記録証明書」というものを取り寄せることで確認できます。
「運転記録証明書」の請求用紙は最寄りの交番・警察署・自動車安全運転センター事務所でも貰うことができます。必要事項を記入し郵便局か、自動車安全運転センター事務所の窓口で申し込みましょう。(安全運転センターに直接持って行っても、すぐには発行してくれないので注意)。
〒郵便局で手続きする場合
運転記録証明書1通670円+郵便局手数料203円=873円払えば、後日自宅に届きます。
家族が「家族滞在」や「留学」ビザ等で28時間以上働いている場合
「家族滞在」や「留学」ビザを家族が持っている場合も注意しましょう。
これらのビザは原則働いてはいけないということになっています。
ですが”資格外活動許可”というものを得ることで週28時間まで働くことができるようになります。この資格外活動許可の週28時間の制限を超えて働いてしまうのもダメです。②”日常生活や社会生活において違法な行為や風紀を乱す行為をくりかえし行っていないこと”に反するので、永住の許可が下りなくなります。
もし週28時間以上働いてしまっていたら?
もし週28時間の制限以上働いてしまっている場合は、いまから週28時間の制限内で働くようにしましょう。
そして5年間法令に反しない就労実績をしっかりと残して永住申請をしましょう。